人間にとって失っていた歩行運動機能の回復は、単なる自主生活領域の拡大のみならず、全身的な新陳代謝を活性化させ、また精神的な向上心を助長することにもなります。したがって、人工関節関連技術は、人間に対する生活支援のみならず、間接的ではあるが生命支援に関連してもその重要性が期待されています。しかしながら、現在の臨床用人工関節では、荷重支持性・運動性・耐摩耗性・固定性などに解決すべき多くの問題が残っています。これらの問題の中でも、特に臨床用人工関節の接触面の片方にベアリング材料として使用されている超高分子量ポリエチレンの摩耗発生問題は、臨床現場から緊急な解決策が要求されています。この問題の解決を目指して、摩耗発生メカニズムの解明や摩耗に影響を及ぼす因子の究明などに関する研究を行っています。
長寿命・高性能の次世代型人工関節の開発において最大の課題の一つとなっている人工関節用超高分子量ポリエチレン(ultra-high molecular weight polyethylene; UHMWPE)の摩耗低減化を目指して、人工関節部品(金属およびポリエチレン部品)のミクロレベルの三次元表面形状がUHMWPEの力学的状態や摩耗挙動に及ぼす影響を明らかにし、人工関節部品の微細表面形状の制御による人工関節の摩耗低減化の方法を研究しています。
関節リウマチや変形性関節症などの患者さんにおいて、人工関節置換は日常生活動作の改善に非常に大きな役割を持ちます。しかし、現在の臨床用人工関節の問題点の一つに耐用年数があります。特にポリエチレン部品の摩耗が進むと再置換が必要となります。臨床用人工関節の更なる耐用性を確保するためには、ポリエチレン部品の摩耗現象を解明し、摩耗を限りなく減少させる必要があります。この問題の解決を目指して、実際に使用された摘出人工関節の摩耗面の観察・測定・分析を行っています。
本研究室では、生体機械工学、バイオトライボロジー、臨床用人工関節の長寿命化・高性能化に関する研究を行っています。
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